Designeast05 Camp in Shodoshima

「デザインする状況をデザインする」を移動しながら考えるシンポジウム・ワークショップの開催

DESIGNEAST05 CAMP in Shodo-Shima -Inter Local-

2014年12月20日、DESIGNEAST05は香川県小豆郡小豆島町坂手港近辺を中心に町内各所において開催された。共催:DESIGNEAST小豆島実行委員会(いのうえただひろ、大塚一歩、向井達也)を中心に、Inter Local=「間・相互」と「地域の個別・固有性」をテーマに、フィールドワーク、鍋づくり、議論など様々な活動が展開された。

瀬戸内海の島々の中で二番目の大きさを有する小豆島は、九州ー四国ー本州間の海上交通の経由地として古くより塩や醤油、そうめんなどの生産を行う「交易の場」であると同時に、僧侶たちの「修行の場」としても形成された歴史がある。その歴史において興味深いのは、これらがおおむね過去3−400年の間に「外部」から持ち込まれたものであるという点だ。例えば伊勢参りにいった島民が三輪そうめんの作り方を学んだことに端を発し小豆島そうめんが誕生したことなど、小豆島を代表する様々な文化は「移動」に基づいているといえるだろう。現在販売される小豆島産のオリーブオイルの一部には、原材料が「スペイン産」と明記されているものがある。醤油がもともと「醤」=食品の塩漬けのことを指し、中国をルーツとする説があるように、あるいは醤油を用いた加工品である佃煮が江戸にルーツがあるように、小豆島の名産品と呼ばれるものがグローバル経済の中に位置づけられることは当然といえば当然なのだろう。しかし、そこに私たちが感じる違和感は今年京都でも議論したように、自分の手元にあって利活用できるはずの資源が結果として最大限利活用できていない矛盾にあるのかもしれない。

ところで、今日の小豆島には食品加工業と宗教に加え観光産業がある。1954年、小豆島を舞台とした映画「二十四の瞳」の成功に伴い、小豆島に観光産業が訪れた。しかしいつまでも「二十四の瞳」に依拠するわけにもかないのは自明だ。結果として観光と産業と宗教が結びつき、霊場巡りや食品加工業者の製造拠点訪問も観光の対象となった。今、小豆島を「ふつうのひと」として訪れた時目にするもの多くは島の固有性を「観光の対象」として位置づけた結果ブランディングされた様々なチラシ、看板、案内図などの広報媒体に明らかであろう。さらに、小豆島は瀬戸内国際芸術祭によって「芸術・デザイン・建築」も挿入され、観光客と地元住民の間に新しい関係性を模索する場となりつつあることも特記すべきだろう。このことはRelational Tourism、「観光から関係へ」と観光だけではない新たな結びつき方を模索した前年の小豆島でのUMA/design farmとMUESUMの活動をまとめた『小豆島にみる日本の未来のつくり方』にも明るいが、アーティスト、デザイナー、僧侶、商人など様々な「移動する人」によって新たな交流、交易がおきつつあるのが今日の小豆島を取り巻く状況である。

京都から出発した私は神戸に夜到着し、神戸港を深夜1時に出発した。船着き場でおちあった関係者らと酒をのみながら深夜、ジャンボフェリーでの船旅を満喫していると高松経由で朝7時に小豆島・坂手港に到着した。まずは坂手港にて荷を解き、向かいの会場であるei CAFEに赴く。一帯はUMA/design farmとMUESUM、dot architectsにしてみれば何度も通った場であり、dot architectsに至っては自身らが設計・施工したUmaki Campや美井戸神社まである。そんな場との結びつきが地元の人々との関係性に見てとれるのは実に興味深い。実際、ei CAFE一階で佇む地元のおじさんに挨拶の声を掛けて立ち話をしたり、ふらっと訪れた地元の人との久々の再会に会話が弾む光景を滞在中何度も目にした。

ei CAFEは瀬戸内国際芸術祭に併せてUMAとMUESUMが中心に整備した場であり、実行委員の向井君に至っては瀬戸内国際芸術祭をきっかけに島に移住した元dot architectsスタッフの強者である。そこまで力をいれることの理由は小豆島側には明らかで、衰退する産業全体にテコ入れをするために場の流動性を高め、多くの人に来てもらうには、都市部との持続的連携を図るための人材を確保することが肝要だからだ。一方、移住したいと思うことや、継続的に何度も通いたいと思う側の理由はそこまで明らかではない。その理由は本質的には質的で計測不可能であり、場の「魅力」と人の「生き方」に条件づけられるからだ。人の行為主体性を誘発するだけの魅力が場に潜在的にあったことが、人を動かしたのではなかろうか。

さて、Inter Localと題したDESIGNEAST05 CAMP in Shodo-shimaは、ei CAFEにて参加者全員で用意していただいた朝ご飯をみんなで食べることから始まった。そして最初の活動は「おにぎり」をつくることであった。早速醤油ソムリエールの黒島慶子さんから島と醤油をとりまく説明を受け、各自好きな佃煮を混ぜたおにぎりをつくることとなった。佃煮の具の多くが国内の様々な場所から取り寄せられたものであることの説明を受けつつ、参加者は各自大きなおにぎりを思い思いの具を混ぜて作っていた。小豆島産の海苔で巻けば完成、ジャンボフェリー手ぬぐいに包めばいよいよ出発である。山ガイドの山本貴道さんのもと、参加者はもやが立ちこめる雨の中、小豆島霊場もある碁石山に赴いた。道中さすがに雨が厳しいのでふもとからは登山せず、途中まで車に乗って1車線分のうねうね道をのぼっていけば、もやの山道だ。

隼山、洞雲山、碁石山とめぐり、碁石山の山岳霊場にて護摩祈祷を住職に行っていただき、おにぎりを食べた。夏至観音で有名な洞雲山もそうだが、修行の場としてつくられたこれらの寺は洞窟内に位置し、その荘厳さに比肩するものはそうない。訪れたときは雨がふってもやがたちこめていたこともあり、まさに「固有」の体験をすることができた。道中、備長炭にもちいられるウバメガシが群生している箇所も通った。京都ではまっすぐな杉が植林されたり手入れされたりしていたが、小豆島ではうねったウバメガシがある。それぞれの存在には理由があり、小豆島が大阪城築城の際にも岩切場としてその名を馳せたことにも明らかなように、小豆島の地形は岩によって形成されている。そのせいでウバメガシの成長は遅く、それが故に密実で堅固な幹がつくられるために備長炭にふさわしい材料となる。自然環境によって、あるいは人工環境の生成のために、樹木の意味や利用用途が決定されることは興味深い。

山からかえってきて一息ついた後、ワークショップとして海、山、街に分かれて材料を入手するツアーにでることとなった。海は「釣りと海岸にある食べ物を拾う」、山は「烏骨鶏2羽をしめる」、街は「醤油などの調味料を調達してくる」の3種類で、意外と参加者は山と海に集中したため私は街に参加することになった。それぞれのチームで採取したものがそのまま鍋の材料になるため、皆の協力が必要であった。出発前にはFABLAB北加賀屋(大阪)のみんなが、GoProを各チームに2台、そしてフィールドノートを全員に配布し、「つくるプロセスを記録すること」がルールとして課された。FABがオープンソースの資源を利活用してものづくりをすることを前提に、鍋づくりのプロセス記録もまた記録していこうという主旨である。

街に赴いた私は、石井岩男さんの柑橘類をもぎとり、正金醤油の醤油蔵の樽から醤油をお玉ですくいとり、鰹節屋さんで様々な乾物を頂戴して鍋作りにもどった。この中でも特に、正金醤油で樽から醤油を頂戴するのは面白い体験であった。未処理、無濾過の状態で樽で熟成中の醤油は通常スーパーで売られているような醤油とは異なり、見た目はスパゲッティのミートソースに近い。ドロリとしており、なめると塩気よりも旨味が口中に広がることで醤油は「発酵食品なんだな」と改めて実感することができた。通常1年はかかる醤油づくりは ー再仕込みなら2年かかるものもあるがー ワインのように寝かせても値段がさほど上がるわけではなく、直売所で500mlの醤油が300円台で購入できることに一抹の不安を覚えた。つくるプロセスが開示され、その価値を学ぶほど商品価格が適正なのか解らなくなる。安いにこしたことは消費者としてはいいのだが、本当に持続可能なのか。他人事ながら心配してしまう。

そしてみんなが集合し、小豆島町長との対話を経てei CAFEで鍋をつくっておいしくいただき、その上で議論を行いつつ各チームの記録動画やフィールドノートをふりかえった。議論の場ではInter Localの意味を再検討するにあたり、共同体間での互酬や交換など今日における意味を問い直すことに触れつつ、半商品性などについて意見がかわされた。顔が見える生産者によって作られるモノの製造履歴・過程が残るなど、強い固有性に根ざすことが「価値」として認められる昨今、Inter LocalであることにはLocalで体験できる物質的な個別・具体性を前提としながらも、情報環境における人々同士の共有可能性を設計していくことが求められるのだろう。FABLABのみんながその場にあるものに根ざしたモノづくりをグローバルに共有されたデータを前提に行うことに象徴される新たなInter Localな関係性とは、小豆島でどのように今後展開できるのだろうか。国家を超越して接続される人々のつながりとは、どのようにデザイン可能なのか。主/副ではなく、単/複として並列的に複数に同時に様々なこととつながる社会とは、どのような形を今後とっていくのか。世界中に流通する汎用的なマス経済と矛盾せずに共存するシビック経済の可能性とはどこにあるのか、そしてデザイナーの役割とはどのように変容していくのか。私たちは引き続き問いを問い続け、答えを漸進的に改めるしかないのだろう。

Survival、Moving Day、Renovating City、Inter Localと4つのサブテーマを掲げた今年のDESIGNEAST05の「CAMP」は、他者としての我々が動き、様々な場と接続していくことでInter Localなネットワークを形成しつつある。人、モノ、情報が流動化することで見えてくる新たな可能性について引き続き来年も問い続けていきたい。そして文末になるが小豆島の関係者の皆様にはご協力に対して再度お礼を申し上げたい。ありがとうございました。

2014年12月23日 小豆島を想いながら新宿にて

水野 大二郎


Designeast05 Camp in Shodoshima

Mobile symposiums and workshops to discuss the situations surrounding design



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